奇妙な異世界

ああ、そういうことか

【短編小説】異世界で、また会おう

 

「お前は選ばれし勇者だ」


白髪の老人が言った。男の目の前には眩い光が溢れている。


異世界グランテラに転生し、魔王を討て」

 

男は目を見開いた。


「え、俺? 異世界転生? 本当に?」

 

「はい、運命が選んだ。これから君は新たな人生を歩むのだ」

 

光が男を包み込み、意識は遠のいた。

 

 

 

 

気が付くと、そこは広大な草原だった。
風が心地よく吹き、鳥のさえずりが響く。

 

「ここは……?」

 

男は手に剣を持っていた。

身にまとう鎧は見慣れぬデザインだ。
胸には「勇者」の証である紋章が輝いている。

 

「そうか、俺は勇者として転生したんだ」

 

その時、小さな村の子供たちが走ってきて、
「勇者さま!魔物が村を襲っています!」と叫んだ。

 

「よし、行こう!」

 

男は剣を握りしめ、村へ駆け出した。

 

 

 

 

村の入口には大きな狼のような魔物が待ち構えていた。
子供たちの悲鳴が響く。

 

「これが魔物か……」

 

男は深呼吸し、一歩踏み出した。


「覚悟しろ!」

 

剣を振るうと、鋭い閃光が走った。

魔物は咆哮と共に倒れた。

 

「やった……!」

 

村人たちは歓喜し、手を取り合って喜んだ。

 

「勇者さま、あなたのおかげです!」

 

男は満面の笑みで答えた。


「まだ始まったばかりだ。魔王を倒すまでは気を抜けない」

 

 

 

 

日々、男は仲間を増やしていった。

弓の名手エリナ、魔法使いのリュウ、心優しい僧侶ミカ。

共に旅をし、強くなり、絆を深めた。

 

「お前たちとなら、きっと魔王を倒せる」

 

「ええ、絶対に」

 

幾度の戦いを乗り越え、男の名は各地に知られた。

 

 

 

 

やがて、魔王城の門前に立った。
黒煙が立ち込め、不気味な空気が辺りを包む。

 

「ここが最後の戦場か……」

 

仲間と共に息を合わせ、一歩一歩城の奥へ進む。

 

「準備はいいか?」

 

「もちろん」

 

魔王は巨大な姿で現れた。

目は燃えるように赤く光る。

 

「来たか勇者よ。だが、お前に我が城は渡さん」

 

激しい戦いが始まった。

剣と魔法が火花を散らし、地響きが轟く。

男は仲間を守りながら、最後の一撃を放った。

 

「これで終わりだ!」

 

魔王は崩れ落ち、世界は平和を取り戻した。

 

 

 

 

王国は歓喜に包まれ、祝福の宴が開かれた。

 

「ありがとう、勇者さま」

 

人々の笑顔が男の胸を温めた。

しかし、男の心はどこか寂しさを感じていた。

 

「俺の役目は終わったのか」

 

仲間と別れ、男は静かに空を見上げた。

 

「また、ここに戻ってこよう」

 

そう心に誓いながら。

 

 

 

 

目を開けると、そこは見慣れた自室だった。
スマホを握りしめ、汗ばんだ額を拭う。

 

「……夢か?」

 

しかし、画面には通知が届いていた。

 

異世界転生、お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしています」

 

男は息を飲み、画面を見つめる。

次の転生先の世界地図が表示され、カウントダウンが始まった。

 

「……また、行くのか」

 

男は微笑みながら、覚悟を決めた。