「お前は選ばれし勇者だ」
白髪の老人が言った。男の目の前には眩い光が溢れている。
「異世界グランテラに転生し、魔王を討て」
男は目を見開いた。
「え、俺? 異世界転生? 本当に?」
「はい、運命が選んだ。これから君は新たな人生を歩むのだ」
光が男を包み込み、意識は遠のいた。
※
気が付くと、そこは広大な草原だった。
風が心地よく吹き、鳥のさえずりが響く。
「ここは……?」
男は手に剣を持っていた。
身にまとう鎧は見慣れぬデザインだ。
胸には「勇者」の証である紋章が輝いている。
「そうか、俺は勇者として転生したんだ」
その時、小さな村の子供たちが走ってきて、
「勇者さま!魔物が村を襲っています!」と叫んだ。
「よし、行こう!」
男は剣を握りしめ、村へ駆け出した。
※
村の入口には大きな狼のような魔物が待ち構えていた。
子供たちの悲鳴が響く。
「これが魔物か……」
男は深呼吸し、一歩踏み出した。
「覚悟しろ!」
剣を振るうと、鋭い閃光が走った。
魔物は咆哮と共に倒れた。
「やった……!」
村人たちは歓喜し、手を取り合って喜んだ。
「勇者さま、あなたのおかげです!」
男は満面の笑みで答えた。
「まだ始まったばかりだ。魔王を倒すまでは気を抜けない」
※
日々、男は仲間を増やしていった。
弓の名手エリナ、魔法使いのリュウ、心優しい僧侶ミカ。
共に旅をし、強くなり、絆を深めた。
「お前たちとなら、きっと魔王を倒せる」
「ええ、絶対に」
幾度の戦いを乗り越え、男の名は各地に知られた。
※
やがて、魔王城の門前に立った。
黒煙が立ち込め、不気味な空気が辺りを包む。
「ここが最後の戦場か……」
仲間と共に息を合わせ、一歩一歩城の奥へ進む。
「準備はいいか?」
「もちろん」
魔王は巨大な姿で現れた。
目は燃えるように赤く光る。
「来たか勇者よ。だが、お前に我が城は渡さん」
激しい戦いが始まった。
剣と魔法が火花を散らし、地響きが轟く。
男は仲間を守りながら、最後の一撃を放った。
「これで終わりだ!」
魔王は崩れ落ち、世界は平和を取り戻した。
※
王国は歓喜に包まれ、祝福の宴が開かれた。
「ありがとう、勇者さま」
人々の笑顔が男の胸を温めた。
しかし、男の心はどこか寂しさを感じていた。
「俺の役目は終わったのか」
仲間と別れ、男は静かに空を見上げた。
「また、ここに戻ってこよう」
そう心に誓いながら。
※
目を開けると、そこは見慣れた自室だった。
スマホを握りしめ、汗ばんだ額を拭う。
「……夢か?」
しかし、画面には通知が届いていた。
「異世界転生、お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしています」
男は息を飲み、画面を見つめる。
次の転生先の世界地図が表示され、カウントダウンが始まった。
「……また、行くのか」
男は微笑みながら、覚悟を決めた。